不動産投資を目的にワンルームマンションを所有し、賃貸管理会社とサブリース契約を結んでいる方も多いことでしょう。一括借り上げ方式であるサブリースは入居者の有無を問わず一定の賃料収入が保証されますが、利回りそのものは低めというのが実情。また売却するにはクリアしなければならない条件があり、注意すべきポイントもあります。この機会にぜひ、知識を深めておいてください。
結論から申しますと、売却すること自体は可能ですが、いくつかの条件をクリアする必要があります。例えば賃貸管理会社と結んでいるサブリースの契約期間の終了が間近であれば、契約を更新せず解約してしまえば、物件の利回りを改善した上で売却することができます。
一方、サブリースの契約期間が残っているという場合、物件オーナー側の意向で解約することは困難です。売却したい場合は、サブリースの契約内容を維持したままで次の買い主に売却する「オーナーチェンジ」という方式を行う必要があります。
まずは今一度、サブリースについておさらいしておきましょう。サブリースとは不動産の一括借り上げ方式のことであり、この契約を賃貸管理会社と結ぶと、物件オーナーは入居者の有無に関わらず一定の家賃収入が保証されます。
空室リスクが回避できるのが大きな利点である反面、一般的な賃貸管理業務の委託と比べると手数料が割高となっており、物件オーナーが手にできる家賃収入は、一般的な賃貸管理に比べ低くなってしまう――つまりは利回りが低くなってしまうのです。
もうひとつサブリースが利回りを低下させてしまう要因として、物件オーナーは家賃設定や入居者審査に関与できないという点があります。物件購入価格のローン返済から逆算して、月々の賃料はこれくらいにして欲しいと思っても、サブリース契約ではそうした事情は考慮されません。
そればかりか、社会通念上好ましくない人物や家賃滞納リスクのある人物、ウイークリーやマンスリー業者への又貸しなど、資産価値が下落してしまう貸し出しが行われても、物件オーナーは文句が言えません。以上の事柄が複合的に重なり合い、サブリースではトータルの利回りが低下してしまうことに陥ることが多いのです。
サブリース契約を結んでいるワンルームマンションを売却したい場合、真っ先に行うべきは契約内容の確認です。契約期間はどれだけ残っているのか、違約金を支払えば解約できるのか否かをチェックし、それらを踏まえた上で、どうすべきかを考慮すべきです。
繰り返し述べています通り、契約期間の終了が間近であれば、迷わず解約すべきです。また契約期間が残っていれも違約金を払えば解約できる場合、違約金の額を秤にかけ、解約した方が得か、後述するオーナーチェンジ方式とすべきかを判断してください。
晴れて解約できた場合は、改めて現状の物件状態や所在地の家賃相場・物件相場などを鑑み、適切な売却価格や想定賃料を算出した上で売却手続きに入るというやり方がお勧めとなります。
サブリースの途中解約が不可とされている場合、あるいは違約金が高額となってしまう場合などは、次の買主に契約の内容込みで売却するオーナーチェンジという方式とする必要があります。その場合、現在の物件オーナー、サブリースの契約会社、次の物件オーナーの3者間の同意が必要となります。
物件オーナー1人でlこなすには、なかなかにハードルが高いというのが実情ですので、サブリース中のマンション売却を得意とする不動産会社にサポートを仰ぐことが望ましいと言えます。
サブリースのワンルームマンションを売却しようと考えているならば、注意すべき点があります。売却するにはまず、サブリース契約を解約しなければなりませんが、この解約自体が非常に難しいということを抑えておかなければなりません。その点について詳しく解説していきます。
サブリース契約は、オーナーが貸主、サブリース会社が借主となり、借地借家法が適用されます。借地借家法では、貸主より借主の方が強く保護されており、借り主つまりサブリース会社の同意がなければサブリース契約を解約できません。借地借家法にも、賃貸人からの解約の申し入れは「正当の事由」がなければできない、と条文にあります。
また、正当の事由があっても、解約に伴う違約金の支払いが必要になる場合もあり、オーナーからの申し入れによる解約は原則難しいです。
サブリース契約には、解約した場合に違約金が設定されていることがあり、サブリース会社が解約に応じてくれたとしても、多くの場合、違約金を支払う必要があります。違約金の相場は、賃料の数カ月分であることが多いですが、1年分と高額なケースもあります。
ただ、サブリース会社や物件の種類などによって違約金は大きく変わるため、相場は参考程度で把握しておきましょう。違約金が相場よりも高額で設定されており、解約したくてもできないという場合もあるので、事前に契約書の解約に関する内容をよく確認しておく必要があります。
賃貸マンションのように一定の収益が得られる物件は、収益還元法で査定されます。収益還元法は、その不動産が将来生み出すであろう収益を基礎に査定する計算法です。
たとえば10万円の家賃の物件の場合、10万円×戸数を査定の基本にします。これに対し、サブリースの物件は、オーナーに1戸当たり8万円~9万円の収入しか見込めません。この金額を基本に査定するため、査定額は一般の賃貸マンションに比べて安くなります。
そのため、高額な違約金を支払ってでもサブリース契約を解除した方が、売却するよりも有利だと判断するオーナーもいるほどです。
サブリース契約は、借主保護の観点から解約は非常に難しいと述べましたが、正当の事由があれば、比較的解約しやすくなります。いくつかあるその例について、それぞれ解説していきます。
オーナー本人がサブリースマンションに居住するために解約を申し出る場合、正当事由として認められやすくなります。たとえばオーナーが仕事の都合などで海外に住む必要があり、日本国内に所有する不動産をサブリース契約し、その後、帰国した場合は日本での住居が必要となります。そのため、正当事由として認められる可能性が高くなります。
一方、オーナーの息子家族が帰国する場合はやや事情が変わってきます。オーナーの居住用ではなく、家族の使用となるため必要性がやや落ちます。そのため、サブリース会社と交渉して理解を得る必要があります。
立退料とは、借り主に対して支払う補償金のひとつです。サブリース契約を解約する際に、違約金に加えて立退料を支払わなければならない場合もあります。立退料は支払う状況によって金額が異なり、一概にいくらとはいえませんが、賃料の6カ月分程度必要な場合もあります。
サブリース物件についてオーナーがローンを組んでいる場合、サブリース物件からの家賃収入からローンを支払おうとしますが、設備の維持費用や建物の修繕費用などのランニングコストなど、想定外の出費で利益が減少することがあります。また、サブリース会社の保証家賃も年の経過とともに下落していきます。
家賃収入が減ったり予想外の出費などによりローンの支払いができず、オーナー自身の生活が維持できなくなれば、売却により解約する正当事由として認められるには十分でしょう。
建物の老朽化により取り壊す必要がある場合、正当事由として認められるケースがあります。ただ、老朽化という言葉は抽象的なので、具体的な内容を示す必要があります。
たとえば耐震診断です。日本は地震大国であり、現在、日本では厳しい耐震基準が定められています。もし老朽化により耐震基準を満たしていないとなれば、地震などの災害時に入居者の生命・健康に大きなリスクがあります。そうなれば、サブリース契約の解約の正当事由になり得ます。
以上の通り、サブリース中のワンルームマンションを売却するには、様々なハードルや注意点があり、一筋縄ではいかないというのが実情です。現実的な方法としては、こうした事情をしっかり汲んだ上で、物件オーナーのために親身となってくれる不動産会社への依頼がお勧めです。